ガーネットの基礎知識
ガーネットについて
ガーネットというと、濃いめの赤い石を想像される方が多いかと思いますが、実際は、青色を除く幅広い色の石が存在しています。そして、トルマリンやトパーズなどのように多くの色を有している他の鉱物とは違い、主な成分が異なる、似たような構造を持つグループの総称を指します。分かり易くいいますと、実際は違う石名とされても良いところですが、似たような構造をしているため同じ『ガーネット』というグループにまとめてしまったというところでしょうか。
名前の由来はラテン語で『granatum(グラナタス)』粒がたくさんあることを表しており、これは、ガーネットが鉱物として発見されるとき岩の割れ目などに結晶がびっしりと張り付いていることからその名前が付いたといわれています。和名ではザクロの実に似ていることからそのまま柘榴(ザクロ)石となっています。
赤色系ガーネット(パイラルスパイト系列)について
- アルマンダイド
- アルマンダイト(アルマンディン)
- 一般的にガーネットというとこのアルマンダイト又はパイロープを指します。同じような濃赤色をしているので色味だけでは判断できません。しかし成分による違いがあるものの、希少性や値段にそれほど差が無いためあまりきちんと区別されずそのままガーネットという名称で売られています。
- 主成分:鉄・アルミニウム
色味:赤・紫赤・赤褐色
- パイロープ
- パイロープ
- 上のアルマンダイトと共に一般的なガーネットを指します。内包された酸化クロムの影響からルビーに近い赤色のものもあります。
- 主成分:マグネシウム・アルミニウム
色味:赤・オレンジ・ピンク・無色
- ロードライト
- ロードライト
- 上記のアルマンダイトとパイロープの中間の成分によって構成された赤紫色のガーネット。
ロードライトとは「バラの花のような」という意味で、色味の綺麗さから上記2つよりも高い評価を受けています。 - 主成分:アルマンダイドとパイロープの中間的な化学組成
色味:紫味のある赤・ピンク
- マンダリン
- スペサタイト(スペサルティン)
- 以前まではあまり日本で流通していなかったようですが、ここ最近は人気と共に比較的出回ることの多くなってきた石です。赤系の石ですが、産地によって微妙に色の差があります。
中でも明るく鮮やかなオレンジ色したものは特別に『マンダリンガーネット』と呼ばれています。 - 主成分:鉄・マンガン
色味:オレンジ・赤褐色
- ウンバライト
- ウンバライト(マラヤガーネット)
- パイロープとスペサルタイトの中間の成分によって構成されたガーネット。
中でも明るく鮮やかなオレンジ色したものは特別に『マンダリンガーネット』と呼ばれています。 - 主成分:パイロープとスペサルタイトの中間的な化学組成
色味:赤・オレンジ・ピンク
緑色系ガーネット(ウグランダイト系列)について
- ツァボライト
- ヘソナイト
- リューコ
- グロッシュラーライト(グロシュラー)
- 色相・性質などが幅広いガーネット。入り込む不純物による色の違いによって、様々な名称が付けられています。
- 一般的に『グリーンガーネット』と呼ばれる石は、緑色のこのグロッシュラーライトのことを指します。近年ではティファニー社によって命名された『ツァボライト(サボライト)』という新しい名称で呼ばれています。
- 色の薄いグリーンは『ミントガーネット』
- オレンジもしくはシナモン色のガーネットを『ヘソナイト』
- 無色透明の場合『リューコガーネット』
- 塊状で産出される南アフリカ産の半透明のガーネットは『ハイドログロッシュラーガーネット』と言い、緑色の場合、翡翠に似ていることから『トランスバール・ジェード(翡翠)』と呼ばれたりもします。
- 主成分:カルシウム・アルミニウム
色味:無色・緑・黄・オレンジ・ピンク・褐色・金など
- デマントイド
- アンドラダイド
- チタンやマンガンが含まれているガーネットです。 こちらも色の違いによっていくつかの名称が付けられています。
- ガーネットの中で最も高く評価されているのが『デマントイド』。黄緑~緑色で大変美しく輝きます。
- 黄色の石を『トパゾライト』といいますが、小さな結晶しか発見されないため宝石としては使われていません。
- 黒色のものは『メラナイト』
- 主成分:カルシウム・鉄・珪酸塩
色味:黄緑~緑・黄色・黒
- マリ
- マリガーネット
- グロッシュラーとアンドラダイトの中間の成分によって構成された黄色味を帯びたガーネット。アンドラダイドの成分により、ファイアが現れるものもあります。1994年頃から市場に出回ったという歴史の浅い石で、名前は産地であるアフリカのマリ共和国に因んでいます。
- 主成分:グロッシュラーとアンドラダイトの中間の中間的な化学組成
色味:レモン色~茶褐色
- ウバロバイト
- ウバロバイト
- クロムによって鮮やかな緑色をしていますが、こちらも小さな結晶でしか発見されないため、宝石としては使われていません。
- 主成分:カルシウム・クロム
色味:エメラルドグリーン
デマントイドガーネット
最後に、ガーネットの中でも最も高い評価を受ける『デマントイドガーネット』についてご紹介します。
グループの分類の中ではアンドラダイトに属しする黄緑~緑色をした鮮やかな石です。トルマリンに例えていうなら『パライバトルマリン』に位置づけられるデマントイドガーネット。ロシアのウラル地方で産出されていましたが産出量が非常に少なく、なかなか市場に出回ることが無かったためかなりの希少価値が付いたといわれています。その後、新しい鉱山が発見されたことにより知名度ともに人気も上がっています。
その人気の理由はなんといっても分散率。ダイヤモンドを凌ぐ程の高い分散率を持つためカットによりダイヤモンドのようなファイアが現れることがあります。その為、ドイツ語で“ダイヤモンドのような”を意味する『デマントイド』という名前が付けられました。更にこのデマントイドガーネットには変わった特徴があり、『ホーステールインクルージョン』という内包物が入っている方が好まれ、高い値で取引されます。それは最高品質といわれるウラル産だけに見られる特徴であるためで、その名の通り、馬の毛のように細長い繊維状のものが美しく入ったものほど良いとされています。2~3ct以上の物は、もう産出が止まったのではないかといわれているため、かなりの高額で取引されています。