宝石珊瑚について

宝石珊瑚は珊瑚の虫、珊瑚虫と呼ばれる動物です。
海岸などで見かけるサンゴ礁とは種類が異なり、宝石珊瑚は海底100m以上の深海から採取したものです。

1742年、珊瑚は宝石であることが確認されました。それ以来、研究が進められ珊瑚虫は「刺胞動物(花虫類)」に分類され「ポリプ」と言う種郡であることが分かりました。
この珊瑚虫は口の周りにある触手の数によって宝石珊瑚とサンゴ礁に分けられます。

1.サンゴ礁について

サンゴ礁は六放サンゴといわれ、口の周りにある触手が6本です。
体内に共生する褐虫藻という植物が光合成を行うため太陽光を必要とするので、浅海に生息していて成長も早いとされています。
ちなみにイソギンチャクもサンゴ礁の仲間になります。

2.宝石珊瑚

宝石珊瑚は八放サンゴといわれ、口の周囲にある触手が8本です。
深海に生息しており、サンゴ礁と違い成長も遅く、人の目に触れることはありません。
約1㎝成長するのに50年近くかかる種類もいます。
珊瑚の成長は、原木の周囲を泳いでいる珊瑚虫が一定の大きさになると原木本体に吸着されることによって成長を続けます。
潮の流れが速いほど美しい枝を作るため、原木自体、自然が生み出した深海の芸術品といっても過言ではないでしょう。
また、宝石珊瑚は動物のため個体差はありますが必ず寿命があり、寿命を迎えた珊瑚はやがて海底の砂となります。

3.宝石珊瑚の歴史

紀元前2万年前(旧石器時代)から宝石珊瑚はあったとされています。
ドイツの旧石器時代、約25,000年前の遺跡から地中海の宝石珊瑚「Corallium rubrum」を加工した玉が出土したという記録があり、ギリシャ、ローマ時代には壁画や花瓶の装飾として珊瑚樹が描かれたり、宝飾品としても数多く使われてきました。

珊瑚の赤い色はギリシャ神話では「ペルセウス」と「メデューサ」の戦いでメデューサの血が海藻に触れた途端、海藻は珊瑚に姿を変えたと言われています。
また、キリスト教では十字架にかけられたイエス・キリストが流した血の色と考えられました。
このような言い伝えから、珊瑚は悪を包み込み、大地に豊かな実りを与えるとされ、魔除けとして扱われるようになったとされています。
現在でもイタリアでは年末年始に赤い物を身に着けると一年間無病息災、健康でいられるとして地中海珊瑚もしくは赤珊瑚が用いられます。
チベット地方でも魔除として「山サンゴ」、珊瑚が化石化したものを仏具や装身具として利用しています。

日本に珊瑚がもたらされたのは、仏教伝来とともに地中海産の宝石珊瑚がシルクロードを渡り、聖武天皇に献上されたと記されています。このことは不確実な言い伝えですが、正倉院の宝物の中に地中海珊瑚が収められていることから、信憑性は高いと言われています。
その後江戸時代までに、宝石珊瑚は輸入品として日本国内に出回り普及していったようです。
また、日本の珊瑚採取漁業は明治以降急速に加速し、現在珊瑚と言えば日本となっていますが、江戸時代までは地中海産が主流でした。

その後土佐沖で桃色珊瑚と赤珊瑚が発見され、その品質の良さから世界の注目を集めることとなり、現在では高知県の伝統産業として定着しています。

4.宝石珊瑚の種類

赤珊瑚

血赤とも呼ばれる赤珊瑚は日本近海(小笠原列島・五島列島・奄美・沖縄・宮古島周辺)で特に土佐湾の水深100~300mの海底に生息しています。
色合いと品質の良さから海外へ大量に輸出された種類です。
特徴としては斑が入ることが日本産であることの証でもあります。斑の入っていない赤珊瑚は更に希少性も高くなります。
現在では採取量も減少し希少価値という面で人気も高く、中でも赤黒い色合いのものは最高級品として取り扱われています。

地中海珊瑚

「サルジ」または「胡渡り」と呼ばれ、イタリアのサルジニア島近海の海底約30mの浅海に多く生息している種類で、日本産に比べると浅い場所に生息しています。
水深が浅いため成長は早いですが、あまり大きくなりません。その為、素潜りで採取する漁師もいるそうです。
日本産の赤珊瑚との違いは斑が入っておらず、単一の色で、珊瑚自体の色ムラも少なく、仕上がり面の色調は美しい赤色です。
ですが、赤珊瑚のような透明感が無く、日本産ほどの希少性もありません。

桃色珊瑚

日本近海の広い範囲に生息している種類で、海底300m~500mで採取されます。その中でも、高知県沖で採れるものが色、品質共に良いとされています。珊瑚の中でも粘り気が強いため彫刻がしやすく、帯留めやブローチ、仏像などの置物としても昔から使われています。
色はほのかなピンク色からオレンジ、赤桃と呼ばれる赤珊瑚に近い色のものまで幅広く「お月さんももいろ」という童話も出来たほど昔から人々に愛されている種類です。
桃色珊瑚の中でも薄いピンク色の均一な色調のものは海外で「エンゼルスキン」、日本で「本ボケ」と呼ばれ高く評価されてきました。しかし、現在は採取されておらず幻の珊瑚と言われています。

白珊瑚

東シナ海から日本近海の広い範囲に生息しています。基本的には桃色珊瑚に分類されますが、白を基調としていますので分類・種類ともに区別されています。
色は純白から乳白色、セピア色まであり、中でも純白のものは貴重となります。また、東シナ海で採取される白珊瑚は象牙色をしたものがあり、こちらも珍重されています。

深海珊瑚

宝石珊瑚の中でも一番深い水深1000mを超える深海底で採取されます。色は白色とピンク色が混ざり合った色で、ピンク色が濃く色が単一なものほど高く評価されます。特に均一なものは白珊瑚やピンク珊瑚として用いられます。

ピンク珊瑚

ピンク珊瑚はピンク色をした珊瑚のことを表し、ピンク珊瑚には様々な種類の珊瑚が含まれます。
先にご紹介した深海珊瑚の他にも、ミス珊瑚やガーネ珊瑚、ミッド珊瑚などがあります。
ピンク珊瑚のほとんどはピンク色に白色が混ざり合うか、ヒが多いため、完璧なものは数十個に一個あるかどうかです。

黒珊瑚

この珊瑚は宝石珊瑚ではなく、サンゴ礁に分類され、今では輸入が禁止されています。現在流通している黒珊瑚はこの規制がかかる前に輸入されたものとなります。また、採取が許されているのはハワイ州政府が許可したハワイ在住の漁師のみ採取を許されています。

5.最後に

では最後に、宝石珊瑚の取り扱いについてご紹介したいと思います。
珊瑚の主成分は炭酸カルシウムなので、酸に溶けやすい性質のため、汗や化粧品、果汁等が付いたときは柔らかい布で丁寧に拭き取ってください。放っておくと徐々に光沢がなくなっていく可能性があります。場合によってはすぐに光沢がなくなることもありますので注意が必要です。
また熱にも弱いため、入浴時や調理時などは外すことをオススメします。

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