古くから人々に愛される宝石。
現在でも装飾品としての顔とは別に、
「パワーストーン」という神秘的・スピリチュアルな一面も持ち合わせています。
古今東西の神話にも登場し、印象深いエピソードが多数伝えられています。
そんな中からお馴染みの宝石から少し変わった物までご紹介させて頂きます。
1.アメジストにまつわる神話
この物語の主役はディオニューソスというギリシア神話に登場する豊穣と葡萄酒の神となります。
お酒に詳しい人にはバッカスと紹介したほうが話が早いかもしれません。
ローマ神話ではバッコスと呼ばれ、英語読みでバッカスとなります。
ディオニューソスは最高神ゼウスと人間の母の間に生まれた私生児で、
その出自は身ごもった母がゼウスの雷に触れてしまったことで亡くなり亡骸からゼウスの太腿に移され生まれたという変わったものでした。
私生児という事で、ゼウスの正妻からは疎まれ、やや歪んだ成長を遂げた彼。
葡萄の栽培方法とワインの製造法を身に着け人間に広める等の功績を積み、見事神として認められますが、酩酊の神とも呼ばれる通り普段から他の神々からお叱りを受ける事が多かったそうです。
そんなある日、従えたバッケー(ヒョウの姿をした粗暴な従者)たちを「次にであった人間をバッケーたちに襲わせてやろう」とけしかけました。
偶然通りがかったのは月の女神ディアナに仕えるアメジストという女官。
一斉に飛びかかるバッケー達が彼女に手をかけようとした瞬間
まばゆい光と共にアメジストの体はみるみる小さくなってゆき、ついには輝く白く透明な石になってしまいました。
女神ディアナが彼女の危機を救ったのかは定かではありませんが、それを見ていたディオニューソスは酔いから覚め深い懺悔を行います。
「私の葡萄の実りはすべてアメジストへの懺悔とする」と、ワインを輝く石に注ぐと
みるみる間に石はワインに染まり、宝石・アメジストが誕生したのです。
その後、アメジストがどうなったかについては星になったとも、宝石の姿のまま人々の魔除けとして祀られたとも言われています。
一つはっきりしているのは現在でも「良くないものを払う、お酒に酔わない」という特性が人々に伝えられているという事です。
2.珊瑚にまつわる神話
今でこそ採取ができなくなりましたが、珊瑚はとてもきれいな宝石です。
そもそも海の生物である珊瑚はどう神話と関わりがあるのか、実はとってもメジャーな女神が関係しているのです。
メデューサという怪物です。
有名なゴーゴン3姉妹のうちの一人ですね。
もとは美しい少女でしたが、女神アテナより自分が美しいと言ったために怒りを買い
醜い姿に替えられました。
もとは海の神ポセイドンの妻として存在しましたが神話における神格の吸収・併合による改変の為に立ち位置が変わったとされています。
そんなメデューサですが、見たものを石化させてしまうという能力から
ペルセウスという英雄により退治されてしまいます。
鏡の盾で目を見ないようにして…という有名なエピソードですね。
そして、やっと本題、
メデューサを打ち取ったペルセウスは首を切り落とし、持ち帰ります。
途中で滴り落ちた血が海に落ち、それが石化効果で珊瑚になったというのです。
とりわけべに珊瑚(赤味の濃い珊瑚)のことを指すようで、ゴーゴン(メデューサを含めた3姉妹の総称)とも呼ばれます。
また、砂漠に落ちた血はサソリとなったともいわれます。
ついにはその首をアテナが手に入れ盾にはめ込み最強の盾「アイギス」の一部となります。
神々の話の中には残酷で悲劇的な結末が多く見受けられ、
その話の中で何か一つ後世に残るエピソードというのもお約束ですね。