世界で初めて金が発見されたのは、今から6000年前のエジプトのナイル川流域と言われております。
当時、エジプトでは金を「神の象徴」として崇め、貴重な財宝として珍重されてきました。
現代にて発掘された歴代のエジプト王の墓からは、金の像に囲まれたり、金に覆われたミイラなども多数発見されています。
また、古代インカ帝国でも繁栄の基とされていたのは豊富な金と言われています。
古くから人々を魅了してきた金。
それは、世界中で起こった「ゴールドラッシュ」によっても証明されています。
1.ゴールドラッシュとは?
新しく発見された金を求めて、世界中から発掘者が殺到することを言います。
世界中で起こったゴールドラッシュは、世界のマネーサプライに大きな影響を及ぼしました。
カリフォルニア・ゴールドラッシュ
一番有名なのは、1848年頃からアメリカのカリフォルニアで起きた「カリフォルニア・ゴールドラッシュ」でしょう。
1848年1月24日、カリフォルニアの労働者であったジェームス・マーシャルが川の底で砂金を発見しました。
農場の関係者は金が採れたことを隠そうとしましたが、その知らせはたちまち広まり、全米だけでなく、全世界から数十万人の発掘者がカリフォルニアに殺到しました。
フォーティーナイナーズ(49er’s)
翌年の1849年に金に魅せられてカリフォルニアに集まった大勢の人々は「フォーティーナイナーズ」と呼ばれました。
当時のカリフォルニアはまだ州になっておらず、サンフランシスコの人口はわずか200人ほどの小さな田舎町でした。
しかし、ゴールドラッシュの影響で、一獲千金を夢見た人々が大勢押し寄せ、1852年には約36000人の都市に急成長し、カリフォルニアはアメリカ31番目の州として迎え入れられました。
2.カリフォルニア・ゴールドラッシュで儲かった者は?
当初はサクラメント川で砂金が見つかりました。
熱心に川底を探すと、1日で1オンス、約20~30ドルほどの価値の金が採れました。
当時の日給は1日1ドルが相場でしたので、人々の夢やロマンが大きくなったのも無理はありません。
しかし、あまりにも多くの人が押し寄せた為、砂金はすぐに底をついてしまいました。
さらに、急激な人口増加によって食料品や日用品が高騰し、49er’sは皆、稼いだお金より毎日出ていくお金のほうが多くなる状況に追い込まれました。
それでも金を追い求めた人々。
結局、儲かった人は誰もいない状況になりました。
しかし、このゴールドラッシュで儲かった人がいました。
それは、金を探そうとしなかった人たちでした。
シャベルとバケツを用意した者
サンフランシスコで小さな商店を開いていた、サミュエル・ブラナン。
彼は金が出たことを世に広め、発掘者達のために日常品を取り揃えました。
川底の砂を掘り起こす為のシャベル、砂の中から砂金を選別するためのゴールド・パンと呼ばれるバケツ。
ブラナンは砂金掘りには必需品のこの二つを大量に買い占めました。
一人で買い占めたシャベルとバケツを10万~20万の人々が取り合います。
こうなると値段は勝手に上がっていき、仕入れ値の100~150倍の値段でも飛ぶように売れていきました。
送金システムを創設した者
同じ頃、ヘンリー・ウェルズとウイリアム・ファーゴの二人組が始めたビジネスがありました。
彼らもブラナンと同じように、発掘者たちに目を向けます。
発掘者の中には、今で言う「出稼ぎ」や「単身赴任」の人が大勢いました。
彼らは、掘り起こした金をお金に換える必要があり、そのお金を預ける銀行が必要であり、さらにそのお金を故郷の家族へ送る必要がありました。
こういった背景を考慮して、ウェルズとファーゴはアメリカで初となる送金・輸送のシステムを作り上げました。
今で言う、宅急便や銀行、換金業者などの業種です。
このシステムは大人気となり、二人で作り上げた「ウェルズ・ファーゴ社」は瞬く間に大きくなりました。
今やアメリカでもトップクラスに入る巨大な銀行ウェルズ・ファーゴ社の創始者となった二人。
その後も次々と皆に喜ばれるサービスを提供し続けました。
作業用のズボンを開発した者
最後の一人は、1853年にサンフランシスコにやって来た、リーバイ・ストラウスです。
サンフランシスコに着いてすぐに発掘者達の為に何でも取り扱う雑貨屋を開きました。
そんな中、発掘者達の洋服は朝から晩までの作業ですぐにボロボロになっておりました。
砂金掘りはしゃがんだりする動作が多く、特にズボンは消耗が激しかったようです。
そこに目を付けたストラウスは、テントなどに使われていた厚手のデニム生地を使って丈夫な作業用ズボンを作り出しました。
これが今のジーンズ(ジーパン)の原点となります。
現代でも人気のあるLevi’s、このジーンズを商品化した人こそ、ジーンズ・ファッションの生みの親と言われるリーバイ・ストラウスなのです。
ジーンズはいまや作業着ではなく、ファッションで欠かせないアイテムになりました。
「リーバイ・ストラウス社」はその先駆者となり、現在では世界100カ国以上で販売されています。
3.ゴールドラッシュが遺したもの
天然資源というものは、いったいどのくらいの量が埋蔵されているのか、いつになったら枯渇するのか、これは誰にも想像できませんでした。
さらに分ける人数が多ければ多いほど、一人当たりの取り分は少なくなります。
カリフォルニア・ゴールドラッシュでは数十万人での奪い合いになりました。
それでも夢を追い続けた人々ですが、その多くは巨万の富を得ることなく、経済的に破綻していったそうです。
その裏で、発掘作業には目もくれず、その周辺でビジネスを開発した一握りの成功者達。
彼らの成功は後世にも語り継がれ、現代に多くの教訓を残し、今なお生き続けているのです。