貴金属で金やプラチナ、銀などは聞いたことがあるでしょうが、パラジウムという名前は聞いたことない人が多いかもしれません。
今回は、あまり知られていないパラジウムについてご紹介したいと思います。
1.パラジウムとは
パラジウムは金(ゴールド)や白金(プラチナ)と同じ貴金属で、元素記号はPd。
プラチナと同じ白金族元素の一つです。
柔らかい銀白色の金属で、合金として使用されます。
自己の体積の935倍もの水素を吸収する為、水素化の触媒や水素精製などの水素吸蔵合金として利用されています。
また、融点が1,554度と低く加工性に優れており、他金属との合金も用意なことから自動車用触媒や装飾品合金、歯科用合金など幅広く利用されています。
パラジウムの産出国
主にロシア、南アフリカ、北米で生産されておりますが、供給はほぼロシア一国に依存している状態です。
需要は北米が最大で、需要の半分以上を北米と日本で占めています。
近年ではロシアでの産出量が激減し、入手が困難になっています。
2、パラジウムと宝飾品
ジュエリー用の貴金属として、パラジウムは宝飾品にかなりの割合で含まれています。
最も多いのはプラチナ900やプラチナ850の割金としての利用です。
Pt900やPt850と表記されるプラチナ製品のほとんどがプラチナとパラジウムの合金です。
・Pt900 プラチナ90% + パラジウム10%
・Pt850 プラチナ85% + パラジウム15%
パラジウムをプラチナに混ぜると、適度な硬さに調節でき、色の調節も行える為、宝飾品には好んで使われます。
その次に多いのがホワイトゴールドです。
K18WGやK14WGが主流で、これは金とパラジウムの合金です。
・K18WG 金75% + パラジウム25%
・K14WG 金58% + パラジウム42%
金にパラジウムを混ぜるとプラチナのような白い金属になります。
ホワイトゴールドは高価なプラチナの代替品として、宝飾品で人気があります。
その他にも、稀に銀に混ぜてあることもあります。
銀にパラジウムを混ぜることによって、銀の硫化(黒く変色すること)を防ぐ働きがあります。
3、パラジウムと金属アレルギー
パラジウムは有能な貴金属として人気がありますが、金属アレルギーの観点から見ると注意が必要です。
金属アレルギーは、汗や体液に溶けてイオン化した金属が人体の中のたんぱく質と結合し、アレルギー物質となって異常な免疫反応が起きることで発症します。
実際に、リンパ球幼若化テストという金属アレルギー検査では、約半数もの人がパラジウムに陽性反応を示してしまいます。
宝飾業界はさほど厳しくありませんが、歯科業界ではかなり厳しくなっています。
虫歯を削った後の歯の詰め物やかぶせ物として使われる金銀パラジウム合金。
特に、ドイツでは保健省が、幼児や妊婦にパラジウム合金を使用しないようにという勧告も出ております。
さらに、ドイツなどの医療先進国では、パラジウムが体に与える悪影響を考慮して、パラジウムフリー(パラジウムを含まない)の金属を強く推奨しています。
このようにヨーロッパでは、パラジウムの安全性に疑問が持たれており、現在ではほとんど使用されていないようです。
日本でも特に歯科業界では、今後自粛の動きが出てくるかもしれません。
4、パラジウムフリーのジュエリー
パラジウムは、アレルギー検査で約半数もの人が陽性反応を示すと伝えましたが、人によってその反応の大きさも違います。
近年では、婚約指輪や結婚指輪にプラチナのリングを選ぶ傾向が強く、Pt900やPt850のパラジウムを含む素材が多いです。
特に女性の方は、せっかくもらった指輪がアレルギーで着けられないってことにならないよう、事前にチェックしておいた方がいいかもしれませんね。
最近では、パラジウムを含まない素材で結婚指輪などを作ってくれるところも多いです。
希少金属(レアメタル)と呼ばれる金属類を使ったジュエリーがその一つです。
レアメタル・・・チタン・イリジウム・ジルコニウム・タンタル・ハフニウム等
しかし、金属自体に希少価値があり、加工も難しい為、かなり高価なものになってしまいます。
また、レアメタルは「金属アレルギーを起こしにくい」だけであって、「絶対に起こらないもの」ではないので、注意が必要です。
5、最後に
金属アレルギーの心配がない人にとっては、パラジウムは有能な金属です。
割金にすることで、色の調節をしたり、錆びにくくさせたりとメリットも多いです。
パラジウム自体も白くて美しい金属で、プラチナより安価な為、宝飾業界では近年力を入れております。
金属アレルギーは気付かないことも多いので、少しでもかゆくなったり、体に変調がみられる際には疑った方がいいかもしれません。
症状が疑われるときは、早急に使用を辞めて、皮膚科に行くなどの対処をしましょう。
また、良い状態で保存するよう心掛け、汗をかくときには使用を控えるなど、使い方次第で症状を抑えることもできます。
金属アレルギーにお困りの方は、宝飾店で相談し、金属アレルギーを起こしにくい素材を選んでみてはいかがでしょうか?