宝石の処理について

ダイヤモンドやルビーなどの宝石には天然のものと人工のものがあります。
また、天然の宝石といっても、全く処理を行っていない宝石はほとんどないです。
世界中で流通している宝石の95%は何らかの処理を施してあると言ってもいいでしょう。
今回はそんなダイヤモンドや色石などの宝石の処理方法について説明したいと思います。

1.エンハンスメントとトリートメント

宝石の処理は大きく分けて2つに分類することができます。
「エンハンスメント」と「トリートメント」です。

「エンハンスメント」とは、宝石が持っている本来の潜在的な美しさを損なうことのないように人の手を加えて人工的に引き出す処理方法です。
日本ではエンハンスメントのことを「改良」といい、天然石として鑑定書にも記載されます。
一方で「トリートメント」は「改変」といい、宝石が本来持っている美しさと関係なく、科学的な操作で自然界ではありえない変化を施す処理方法です。
日本ではトリートメントされた宝石のことを処理石とみなし、天然石としては扱われません。
一般的にエンハンスメントされた宝石は、改良された状態が長く続きますが、トリートメントされた宝石は、改変された状態を長く維持できない場合があります。
エンハンスメントは「化粧」、トリートメントは「整形」と考えるとわかりやすいかもしれません。

2.エンハンスメント処理一覧

加熱処理

宝石を加熱することによって、その宝石が本来備えていた色を引き立てる処理方法。
ルビー・サファイヤなどのコランダムのほとんどが加熱処理を施されています。
日本では一番一般的な処理方法です。

含浸処理

オイル・天然樹脂・ワックスなどを宝石のキズにしみこませることにより、耐久性や透明度を上げ、色を変化させる人工処理方法で、内包物の多いエメラルドによく施されます。
エメラルドの99%はこういった含浸処理が施されております。
超音波洗浄機などで洗浄すると、溶け出す可能性がありますので注意が必要です。

充填処理

穴や傷があった場合、それを隠すためにガラスなどを詰めて修復する処理方法です。
主に珊瑚やダイヤモンドに施されていることが多いです。
充填処理を施された宝石は、極端に価値が低くなります。

漂白処理

宝石表面の汚れやシミを取り除く人工処理方法です。
主にパールに施されています。

3.トリートメント処理一覧

ベリリウム拡散加熱処理

従来の加熱処理とほとんど変わりませんが、加熱処理の最終段階である1800度の加熱時、クリソベリルの粉末を加えることにより、表面の発色を元の色から別の色に変化させることができます。
宝石の持つ本来の美しさを引き出すための一般処理とは異なり、人為的な操作が行われることから日本では極端に評価が下がります。

放射線処理

色の悪いダイヤモンドに放射線を照射し色を変える処理です。
放射処理されたダイヤモンドはトリーティド・カラーダイヤモンド(トリートカラー)と呼ばれ、カラーレスやブラウンダイヤモンドにラジウム塩あるいはラドン、コバルト60を照射します。照射には電子線加速器を使います。
ピンクやブルー、グリーンといった様々な色調も作り出されています。

レーザードリル処理

ダイヤモンドの中に内包物(インクルージョン)があった際に、レーザー光線で微小な穴をあけ、そこに強力な酸を流し込み白く漂白し、内包物を目立ちにくくすることです。
この処理によってできる特徴をレーザードリルホール(LDH)と言います。

コーティング処理

宝石の表面に色のついた薄膜をコーティングする処理です。最近のピンクダイヤモンドに見られる処理で、ルースの状態であれば比較的容易に判別することが可能です。ただし、現在流通しているもののほとんどがメレサイズのため、判別は難しく、石留されているものは更に難しくなります。
また、このコーティングは強酸に対して耐久性が無いとされています。
ダイヤモンドの他にトパーズにもされよく施される処理で、トパーズに関してはチタンなどを蒸着させコーティングした「ミスティックトパーズ」があり、幻想的な色彩で処理カラーであっても人気が高いです。

※今回ご紹介したそれぞれの処理についてですが、宝石によってはどちらともとらえられる場合がございます。2004年以降はこういった処理についてはエンハンスメント・トリートメント区別せずに、トリートメントと呼ばれるようになりました。

まとめ

宝石それぞれに様々な処理方法がありますが、冒頭でもお伝えしたようにほとんどの宝石は何らかの処理が施されています。処理された宝石であろうとなかろうと、気に入った宝石を身に着けることが一番大切だと思います。
是非、お気に入りの宝石を見つけてくださいね。

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