銀の性質や歴史・銀製品についてご紹介してきましたが、今回はそんな銀の除菌・殺菌効果についてお話したいと思います。
1.銀イオンとは
銀イオン(Agイオン)という言葉を聞いたことがありますか?
制汗スプレーなどでAg+という表示を見たことがある人は多いかもしれません。
イオンというのは、原子または分子が電子を放出するか受け取るかで電荷を帯びた状態のことを言います。
物質によってプラスイオンまたはマイナスイオンがあり、銀イオンはプラスの電荷を帯びているので「Ag+」と表記します。
つまり、銀イオンもAg+も同じで表現が違うだけなのです。
2.銀イオンの殺菌・除菌・消臭効果
水中に溶けだしたプラスの電荷を持つ銀イオンは、水中に漂うマイナスの電荷を持った菌に付着して菌の活動を抑制させて殺菌します。
これを繰り返すことによって、水中の菌が少なくなっていき、除菌作用が発生します。
菌がいなくなるということは、細菌や雑菌の発する匂いも除去してくれるということで、消臭効果にもなります。
銀イオンによるこれらの効果ですが、これは銀イオンによるものだけでなく、銀の活性酸素の効果もあると言われています。
3.銀イオンの歴史
古来より銀は神秘の金属と言われ、不思議な力を持っていると考えられてきました。
貴族たちは銀の壺に水を入れて、水の腐敗を防ぎ、飲料水として遠征先に運んだとされています。
また、眼病や蓄膿症などの疫病を治癒する効果もあり、古代の人々は銀に貴金属として高い価値を与えてきました。
19世紀初頭にインドで発生したコレラは世界中で猛威を振るいました。
特に、河川の水を利用していたヨーロッパではコレラが大流行しました。
ドイツの細菌学者であったロベルト・コッホは、コレラの原因が河川中に生息していたコレラ菌によるものであると発見し、水中の細菌類の殺菌に関する研究が本格的に始まりました。
1929年、ドイツのGクラウスは、銀が水に接する際に自然溶出する微量の銀イオンが水中の微生物を死滅していることを発見しました。
銀イオンに優れた殺菌作用があることを証明し、コレラ治療法に役立てたのです。
その後、世界各国で上水道の発達とともに飲料水を殺菌する際に、銀イオンを応用する研究が始まりました。
1930年に世界に先駆けて旧ソ連で、その後ドイツ・イギリス・アメリカ・フランスと、水道水に銀イオン殺菌が採用されるようになりました。
日本でも終戦後、衛生的な水を供給していたという記載があります。
4.銀イオンの安全性
除菌や殺菌作用があるのは良いことですが、そもそも銀イオンは人体には影響ないのでしょうか。
やはり気になるのは安全性です。
ちなみに、銀イオンは水などの媒体に溶けている状態なので、よく水銀と間違える方がいます。
銀と水銀は全く異なる物質です。
水銀を冷やして個体にしてもそれは銀ではなく、固体の水銀です。
科学的な知識が不十分な時代に見た目や性質が似ていることから付けられた名称も少なくありません。
銀は今のところ一般的に人体には無害であるとされています。
銀の壺に水を入れて飲料水として使っていたように、銀イオンが健康に無害であることは歴史が証明しています。
それに、銀を利用した食器や装飾品などは古くから数多くあり、現代でも次々と商品が販売されています。
また、銀は食品添加物としても認められており、体内に入っても無害であることが証明されています。
現在では、銀イオンは人為的に作られた抗菌剤よりも安全であることが知られています。
その特性を生かし、私たちの生活の中に数多くの生活用品として応用されています。
例えば、銀イオンを応用した抗菌消臭スプレーや制汗スプレーなどは大流行しています。
他にも、布地に銀を織り込んだ靴下や下着も販売されています。
家電製品では銀イオンによる殺菌・除菌作用のある洗濯機や冷蔵庫も人気です。
今後さらなる研究が進み、銀の安全性がますます証明されていくと思います。
現在銀イオンは、医療や農業など幅広い分野で応用されてきています。
銀イオンの応用はこれからまだまだ発展していくことでしょう。