人々はなぜ宝石を身に飾るのか。
なぜ、時代を越えてまで女性を魅了するのか。
そんな宝石の鑑定・鑑別は時代とともに専門知識を多く要求されていっています。
今回は、「鑑定書」と「鑑別書」の違いについて説明させていただきます。
1.鑑定書とは
鑑定書とはダイヤモンドにのみ発行される、別名「ダイヤモンド・グレーディング・レポート」と言われるものです。天然のダイヤモンドがどのような品質かを、各種の計測・検査によってランク付けしたレポートを意味します。
一つのダイヤモンドに一つだけしか発行されない、いわばダイヤモンドの成績表のようなものです。
10個のダイヤモンドが付いている製品があったとして、その全てに鑑定がなされていれば、その製品には必ず10枚の鑑定書がついていなければなりません。
2.4Cについて
4Cとは、<ダイヤモンドの重量(Carat)、カラー(Color)、クラリティ(Clarity)、カット(Cut)>を差し、ダイヤモンドのグレードを評価する国際基準で、アメリカ宝石学会(GIA)が制定したものです。
◇Carat
カラットとは、ダイヤモンドの重量のことで、大きさを示すものではありません。
カラットが大きくなればなる程、希少性も出てくるため高価になります。
(1カラット=0.2g)
◇Color
一般的にダイヤモンドは無色であると思われていますが、天然石なのでわずかに色味を帯びていることが多いのです。この色味の違いを示すためにアルファベットのDを最高ランクの無色として、E~Zまで順に並べたものをカラーグレーディングシステムと言います。
そのグレードの差はきわめて微妙で色温度を厳密に管理された光源下での判断が求められます。H,Iまでは正面から見た時に無色に見えるという評価を国際的に受けています。
無色のもの意外にも、元々色味を帯びているファンシーカラー(※1)も存在します。
(※1ファンシーカラー:パープル・グリーン・オレンジ・ピンク)
◇Clarity
キズ=内包物(=インクルージョン)の評価。
10倍ルーペで拡大検査し、インクルージョンの有無、位置、大きさ、性質、数、色を総合的に判断し、評価され、フローレス(内包物が全く発見できない)からI3(肉眼でも発見出来る位の内包物)までの11段階に分類されています。多ければ多いほど、真上から見た時に大きければ大きいほど、中央に近ければ近いほど、評価は下がってしまいます。
◇Cut
ここでいうカットとはダイヤモンドの形状を指すのではありません。
カットがどれだけ正確で美しいかを判断するのです。
ラウンドブリリアントカット(=58面体)に対してカットが評価され、精巧なカットであればあるほどダイヤモンドの内部で反射される光を最大限に活かして、素晴しい輝きを得ることができるのです。
3.鑑別書とは
鑑別書は、鑑定書と違い、ダイヤを含むどんな石でも作成することが出来ます。
あくまで何の石か、偽物か本物かについて言及しているだけの証明書になります。
鑑別した石について等級(グレード)を示すものは記載されておらず、極端に言うと、ガラスや道端に落ちている石でも作成は可能です。
鑑別書でもっとも大事な箇所は鑑別結果で、他の検査項目は鑑別結果を導き出すための過程を述べたものです。
4.主な鑑定機関
ここでは、国内外の代表的な鑑定機関を紹介し、それぞれの特徴を紹介します。
宝石鑑別団体協議会(AGL)
日本国内にある鑑定機関は全て普通の民間企業となります。日本国内には60以上の鑑定機関が存在しており、それをAGLによって統括しています。AGLは、GIA(以下で紹介)を基準としたAGL基準で鑑定を行っています。そんなAGL加盟の鑑定機関の中でも、AGTジェムラボラトリー(GIA)と中央宝石研究所(CGL)は、特に信頼度が高い鑑定機関と言われています。
国外であれば、GIA(Gemological Institute of America)とHRD(Hoge Raad voor Diamant)が世界で最も厳しい鑑定機関として有名です。
GIA
拠点はアメリカにあり、ダイヤモンド取引の指標である4Cを考案したことから、世界で最も権威のある鑑定機関であると言われています。宝石鑑別団体協議会(AGL)の評価基準もGIAのものを基に作成されています。
HRD
拠点はベルギーにあり、ヨーロッパで高い信頼度を誇る鑑定機関です。
AGTジェムラボラトリー(GIA JAPAN)
GIAと提携している日本唯一の機関で、もともとは、昭和46年に創立した日本宝石鑑別協会から、分離した子会社がAGTジェムラボラトリーです。日本宝石鑑別協会よりラボ部門を分離し、株式会社エージーティ・ジェム・ラボラトリーを設立。1981年7月に宝石鑑別団体協議会(A.G.L)を設立しました。
中央宝石研究所(中宝研、CGL)
昭和45年に創業した日本最大の鑑定機関になります。ダイヤモンドの鑑定の国内最大シェアを誇っています。鑑定書の発行数が最も多いので、特にダイヤモンドのグレーディングを得意としており、国内ではこのグレーディングが基準とされています。
5.まとめ
鑑定・鑑別機関は全国に数えきれないほど多く存在します。
大手デパートや全国規模の宝石販売チェーン店では、保証書を鑑定・鑑別書として変えて発行したり、独自の鑑定・鑑別書を作成している場合もあります。
そういったものは名目が「鑑定書」になっていても、グレードがまったく記載されていなかったり、グレードが「~と同等」としか記載されていなかったりします。また、「鑑別書」となっていても単純に何の石か、何の重さ当しか記載されておらず、基本的な検査結果すら記載されていません。
こういったものはあくまで販売店の「保証書※2」扱いになります。
最新のものであれば評価の対象と成りますが、年数の古いものやその他の鑑定・鑑別機関はなかなか評価対象になり難くなってきます。
※2 保証書とは
鑑定・鑑別書と違い、宝飾店がその商品に対して独自に発行しているもので、内容はお店により変わります、
査定の指標に使うことは出来かねます。